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IkiCHI(イキガイ):「生きがい」の概念から共通の目的を見出す(CHI 2025)

「第43回 人と情報システムの相互作用に関する国際会議:ACM(計算機協会) CHI(情報技術を活用して社会課題の解決と新しい価値の創造の両立を目指す世界的な学際研究フォーラム。読み方は「カイ」) Conference on Human Factors in Computing Systems」(CHI 2025)が2025年4月26日~5月1日にパシフィコ横浜で開催されました。横浜は伝統や多文化性、革新性が独自に融合した街で、学際的な協働を目標に掲げたCHI 2025にとって理想的な開催地でした。本会議には、これまでの参加人数の記録を打ち破る5千人以上の参加者が集まりました。また、本会議では人に目的意識や生きるための理由を与える「生きがい」をテーマに掲げました。
大陸の橋渡し
日本初となる本会議の開催地は慎重に検討され横浜になりました。地域連携委員長の北村喜文教授は、ホテルや駅、レストランなどへのアクセスのしやすさがある横浜の利便性の高さが開催地を決める理由の一つだったと語っています。共同実行委員長の山下直美教授は「横浜は空港や港から近く、東京のような大混雑がありません」と付け加えました。共同実行委員長のヴァネッサ・エヴァース教授は二人に同意し「横浜はすばらしい環境が整っており、家族連れに適した場所です」と話しました。

CHI 2025について語る主催者たち。左から、ヴァネッサ・エヴァース教授、山下直美教授、北村喜文教授。

CHI 2025で行われた茶道の講義。
19世紀に日本で初めて世界に向けて開かれた港である横浜は、CHIの多面的で世界中の人とつながり合っているという特性も表しています。「今回の会議はアジア太平洋地域からの参加者が中心となる初めての会議です」とエヴァース教授は話しています。エヴァース教授と山下教授は、書道や座禅、茶道などの日本の文化体験を参加者に提供する役割を任されていました。初めは言葉の壁があることを心配していましたが、横浜市観光協会から多大な協力を得て、主催者と地元企業とのコミュニケーションを円滑に進めることができたといいます。
産業界と学界が交差する横浜
横浜は日本のテクノロジーと教育のエコシステムにおいて中心的な役割を果たしている街です。それが機運となり、世界で活躍する事業者や研究者の関心をCHI 2025へと導く一助となりました。エヴァース教授は「私はこの地で産業と学術界が協調することの真の価値を見出しました」と語っています。さらに、横浜には研究開発の拠点が数多くあり、地理的に東京に近いことから、CHIは支援企業を国内外から多く得ることができました。

学術的な思考と産業界の展示が交わる場として理想の空間を提供したパシフィコ横浜。

横浜で開催されたCHI 2025にて、左から山下教授、エヴァース教授、北村教授。
未来を見据えて
エヴァース教授にとって強く心に残った本会議での出来事として、アジア太平洋地域からの新しい会議参加者たちに会ったことを挙げました。「CHI2025では世界中から集まる人たちに会うために若い学生が多く横浜に集結しました」と若年層がCHI2025の主な参加者だったと語りました。
「教育と教材はアナログからデジタルへ移行してきています。よりよい教育機会を提供するためには多くの新しい手法を発展させる必要があります」と北村教授は説明しました。山下教授は、この分野においてのAIの大きな役割を思い描き「AIがより賢くなるにつれて、各学生が自分に合った教育を受けることが可能になります」と語っています。これは特に新型コロナウイルスの感染拡大のような混乱時に活用できます。CHIの参加者に対して意図したことは、本会議で展開される学術的な内容を学ぶだけでなく、横浜の協働精神からもインスピレーションを得てもらうことでした。横浜市観光協会は、主催者と地元企業をつなぐ重要な役割を担い、現地で行われたワークショップを円滑に進めました。ワークショップは畳のクラフトや書道、宮大工の仕事を体験するものでした。これにより参加者に伝統文化を体験してもらう傍ら、地元企業を支援することにもなりました。
信念を実践できる横浜
CHI 2025における持続可能な開発目標(SDGs)への取り組みは、マーケティングキャッチフレーズをはるかに超えるものでした。エヴァース教授は次のように話しています。「会議場は本会議開催のために持続可能な選択肢をたくさん提案してくださいました。例えば、プラスチック製のネームタグの代替品を見つけるなどです。別の都市や国では、持続可能な選択としてプラスチックフリーを試みても、結果的にはプラスチックを使わざるを得ない場合があります。横浜では、あらゆるものに対して、より持続可能な選択肢を見つけることができました」。さらに、持続可能な代替品の多くは、横浜の地元企業によって提供されたものでした。
平等な環境を整えることも本会議のもう一つの重要な目標でした。その点も横浜を開催地にしたおかげで容易に達成できました。「私たちは、すべての参加者にくつろいでいただきたいと考えていました」。パシフィコ横浜は、それを叶えるための支援を行いました。例えば、CHI 2025から指定された一部のトイレをジェンダーニュートラルなトイレにするなど、本会議のニーズと目的に合わせて会場を調整しました。

記録的な参加者数となったCHI 2025では、会議の開催においてパシフィコ横浜が柔軟に対処すべき課題が提示された。

受け継がれ続けるもの
北村教授はCHIの研究分野を地域の参加者に説明する役割を担いました。その講演「触れる未来、創るCHIの世界」では、人と情報システムの相互作用の研究がどのように行われているのか、また、それを進める上での国際会議が果たす役割について説明しました。講演の目的は、高校生の進路選択における大学や研究分野を考える際のヒントとなり、最終的には、将来を考えるための準備をしてもらうことでした。シンポジウムには200名以上が集まりました。北村教授はこれを横浜市の功績だと話しています。「横浜市は企画や運営の支援だけではなく、チラシやポスターを高校へ配ること等にも協力いただきました」。さらに北村教授は、日本文化を海外からの参加者と共有する機会があったことを喜んでいました。本会議のテーマ「生きがい」は、日本文化を伝えることに非常に役立ちました。
その一例として、スタッフが法被を着ていたことが挙げられます。法被は祭のときに着用される日本の伝統的な上着です。エヴァース教授は、Tシャツではなく法被を選んだことで、CHI 2025に色彩と楽しさがもたらされ、よりリラックスした雰囲気になったと話しています。さらにそれは自身の心の平穏、おそらくは自身の生きがいを見つける助けになったと続けました。山下教授にとっての生きがいは「他者との協働において、より強いつながりを築き、より深い理解を増やせたこと」だと話しました。
本会議の計画中に、山下教授は「横浜は持続可能性をかなり意識している。また、国際社会を重要視している」といううれしい驚きを感じていました。利便性の高い立地や横浜市からの手厚い支援があること、さらに持続可能性に尽力してきた実績のある横浜は、CHI 2025にとっての理想の開催地というだけでなく、あらゆる国際会議や展示会においても最適な開催地なのです。横浜の街は、あらゆる人々を温かく迎え入れます。
CHI 2025:
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会議名 第43回 人と情報システムの相互作用に関する国際会議 (CHI 2025)
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共同実行委員長 山下直美教授、ヴァネッサ・エヴァース教授
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地域連携委員長 北村喜文教授
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会期 2025年4月26日~5月1日
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開催地 パシフィコ横浜
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ウェブサイト https://chi2025.acm.org/