新たなつながりを創出する:IEEE ロボット工学とオートメーションに関する国際会議 2024(ICRA2024)

ICRA2024 実行委員会 王 志東委員長

ICRA2024 実行委員会 委員長であり千葉工業大学で教鞭を執る王 志東教授へのインタビューを通じて、この権威ある会議の開催地となった横浜の魅力を探ります。横浜がこの会議のテーマである「CONNECT+」をいかに体現しているか、またこの分野における世界的な協力関係の糸口として機能しているかについて、王教授が語ってくれました。便利な立地にあり、豊かな文化遺産を誇る横浜は、伝統と革新が見事に融合した街なのです。

便利な日本の玄関口

横浜の魅力のひとつは東京から近いという立地の良さです。羽田空港から電車でわずか30分ほどの距離にあり、アクセスのしやすさは群を抜いているといえます。「会議をプロモーションするにあたり、横浜の利便性のよさや、開催都市としての優れた点を強調しました」と王教授は話します。

「この会議は日本の神戸から始まり、シンガポール、中国、オーストラリアといったアジア太平洋地域へと拡大しました」と王教授はICRAの軌跡を振り返ります。この10年の間に地域的な集まりだったものから世界的な大きな会議へと発展しました。そして今回、横浜で開催された会議は、これまでで最も多くの参加者を集めました。

みなとみらい21地区を背景に、会議と開催地としての横浜について語る王志東教授。

みなとみらい21地区を背景に、会議と開催地としての横浜について語る王志東教授。

横浜の地元ベンチャー企業の商品技術や取り組みを知るために地元企業の共同出展ブースに立ち寄る会議の参加者。

横浜の地元ベンチャー企業の商品技術や取り組みを知るために地元企業の共同出展ブースに立ち寄る会議の参加者。

参加者数が増え、学生も注目する会議に発展

王教授によると、当初は3,000人を想定していた参加者が、驚くべきことに現在では2倍の6,800人を超えるといいます。特に注目すべきは若い学生の参加です。世界各国からボランティアとして招待された60名の博士課程の学生を含めると、参加者全体の47パーセントを学生が占めており、これまでの会議よりも増えています。これはロボット工学研究への関心の高まりを示すとともに、新しい才能がこの分野で活躍する有望な兆候でもあります。

ロボット工学の人材を惹きつける日本

王教授は、統計上の数字だけでなく、この会議の目的の一つである“世界のロボット技術者を惹きつける日本”の立ち位置を強調します。横浜を開催都市に選ぶことで、参加者に日本への親近感を育んでもらい、将来の雇用や共同プロジェクト、そしてパートナーシップへと発展することを期待しています。

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新たな発想が生まれる場所

横浜の魅力は便利な立地だけではありません。洗練された都会と美しい自然が調和し、青い海と豊かな緑の空間が織りなす景色を楽しむことができます。横浜を象徴する「みなとみらい21」のウォーターフロントエリアには近代的なビル群や歴史的な客船があり、会議の背景として絵になる場所です。「横浜はすばらしい街です。東京に行ったことがあるという教授はたくさんいますが、そのほとんどは横浜に来たことがありません。彼らはその美しさに驚きます。日本で2番目に人口が多い都市であるにも関わらず、その魅力は海外にはあまり知られていません。すばらしいのは風景や気候だけでなく、産業も盛んで文化も豊かなことです」と王教授は指摘します。

伝統と革新の架け橋

ICRA2024のテーマである「CONNECT+」は、伝統と革新をあわせ持つ横浜にも見ることができます。三溪園や赤レンガ倉庫といった歴史的建造物を含む横浜の豊かな文化遺産は、最先端技術とのコントラストをより際立たせています。「横浜は、ICRAのような6,800人以上もの人が参加する大規模な会議を開催できる街です。例えば、寿司や天ぷらのような日本食を提供するとともに、歌舞伎や獅子舞、芸者の舞といった日本の伝統芸能や、最新の流行曲などを取り入れたレセプションパーティーも用意できます。実行する上で難しい課題もありますが、横浜がもつ革新的な精神は、クリエイティブな方法での解決を可能にしてくれます。こうした可能性が、横浜を国際会議の理想的な開催地にしているのです」

横浜の中心部で開催されたICRA2024。メイン会場となった好立地のパシフィコ横浜。

横浜の中心部で開催されたICRA2024。メイン会場となった好立地のパシフィコ横浜。

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持続可能な考え方

ICRA2024は、持続可能な開発目標(SDGs)に合わせて、世界の社会課題を解決するためにテクノロジーを活用することを強調しています。横浜が持つ最先端技術の確固たるインフラとサステナビリティへの取り組みも行いました。王教授が一例として挙げたものに「風呂敷」があります。会議では繰り返し使えるコングレスバッグとして、日本の伝統的な風呂敷を配布しました。そこには、ごみを減らすだけでなく、日本の文化を参加者と共有する意図が込められていました。

パシフィコ横浜の「サステナビリティ方針」の取り組みでは、二酸化炭素の排出量を削減し、再生可能エネルギーを推進し、そしてエコフレンドリーな活動(パシフィコ・エコ・アウェアー)を支援することで、地域の持続可能性への取り組みをさらに強化させています。これにより横浜は、ロボット工学とオートメーションの分野における国際的な協力関係を強化し、新たなパートナーシップを育み、そして既存のパートナーシップをさらに活発化させるための理想的な舞台となっています。

包括的なロボット・コミュニティ

ICRA2024が横浜を開催都市に選んだもう一つの理由は、活気に満ちた包括的なロボット・コミュニティがあるからです。横浜は、一流の研究機関や革新的な新興企業、大手ハイテク企業が集まる活動的なビジネスネットワークがあります。「会議を横浜で開催することで、私たちの業界が未来へとつながります」と王教授は話します。過去最多の参加者を国内外から集めるICRA 2024は、ロボット産業の革命児たちとグローバル・パートナーをつなげ、さらにロボット産業に精通したアドバイザー的な参加者と、そのアドバイスを受ける多様な世代の参加者を結びつけました。

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「無名庵」で茶道を楽しむ王教授。

「無名庵」で茶道を楽しむ王教授。

横浜市観光協会がイノベーションの起爆剤に: 「YOKOHAMA MICE SHOWCASE 」

横浜市観光協会(YCVB)は、ICRA2024のような国際的なイベントをサポートする重要な役割を担っています。その総合的な支援体制は多岐にわたり、後方支援から文化的なプログラムまで、主催者と参加者の双方にシームレスな体験を提供します。王教授は、YCVBが主催するツアーやイベントに自ら参加したことがあるといい、その活動を称賛しました。

今回のインタビューのなかで王教授は、ICRA2024の文化体験イベントの目玉のひとつであるモバイル茶室「無名庵」が設置された経緯を話してくれました。このユニークな文化体験は、2023年にYCVBが主催した「YOKOHAMA MICE SHOWCASE」で紹介されたものでした。王教授はモバイル茶室の設計者である花升木工のチームに感銘を受けたといいます。彼らはユネスコ無形文化遺産に登録されている「宮大工」の技術を持つ職人です。これがきっかけとなり、ICRA2024の文化的なイベントとしてモバイル茶室が取り入れられ、500人以上の会議参加者がこの茶室を楽しみました。

ICRA 2024が閉幕し、改めて感じることは、横浜が単なる開催都市というだけでなく、伝統と革新、そして世界的なコラボレーションのシンボルであるということです。現代と伝統が融合した横浜は、会議への惜しみない支援を行うとともに、参加者に変革をもたらす舞台を備えています。活気に満ちたアクセスしやすい都市、ロボット工学の分野において多様性と包括性を育む都市。王教授の言葉は、こうした横浜のイメージをさらに鮮明に残してくれました。

ICRA2024:

  • 会議名 IEEE ロボット工学とオートメーションに関する国際会議 2024(ICRA2024)
  • ICRA2024 実行委員会 委員長 王 志東
  • 会期 2024年5月13日~17日
  • 開催地 パシフィコ横浜
  • ウェブサイト https://2024.ieee-icra.org/