変化し続けるためのカギは“Wa(わ)”:第22回 国際自動制御連盟世界大会(IFAC World Congress 2023)

第 22 回国際自動制御連盟世界大会の参加者に会場となった横浜の魅力を語っていただきました。左からヒョウ・サン・アン教授、淺間一教授、ボゼンナ・パシック=ダンカン教授、ヒュングボ・シム教授、ヨンスーン・エウン教授。

第 22 回国際自動制御連盟世界大会の参加者に会場となった横浜の魅力を語っていただきました。左からヒョウ・サン・アン教授、淺間一教授、ボゼンナ・パシック=ダンカン教授、ヒュングボ・シム教授、ヨンスーン・エウン教授。

淺間一教授

The International Federation of Automatic Control(IFAC)/国際自動制御連盟会長(2020~2023年)

3年に1度開催される国際自動制御連盟世界大会(IFAC World Congress)は、制御工学や技術に関する学際的な分野における最大の学術集会です。2023年7月9日~14日にパシフィコ横浜で開催され、東京大学のロボット工学者、淺間一教授が会長を務めました。IFACは自動制御技術やロボット工学の向上に取り組んでいますが、今回の対面での会議には62の国と地域から3,206名の参加者が集い、感染対策に配慮しながら知識を共有することができた極めて貴重な機会となりました。「調和」を意味する「Wa(わ)」をテーマに、大会は協力的な雰囲気となりました。

自動制御の最新技術を横浜から世界へ発信

IFAC 2023 World Congress 2023のヴィジョンは、日本の「Wa(わ)」というコンセプトに包括されていました。「Wa(わ)」には複数の意味があり、調和や平穏、繋がりやコミュニケーション、さらに反響という意味も含まれると淺間教授は話します。「『Wa(わ)』に含まれる全ての意味が、社会的な問題を解決し社会的な価値を生み出すという、私たちの挑戦と目的に深く関係しています」

本質的に自動制御は、人に危害を与えるような危険を察知したときに自動的にシステムを停止させる技術で、エレベーターなどに活用されています。最近では、社会を便利にするアプリケーションが多く開発されています。淺間教授は次のように話します。「エネルギーや脱炭素化、持続可能性やパンデミックなど、私たちはさまざまな社会問題に直面しています。センサーネットワークを使ってこのような問題を検知して介入し、必要に応じて人との接触を減らすためのロボットを開発できる可能性もあります。自動制御の技術は社会問題を解決するものであり、必要とされる科学技術を提供します」

このような多くの科学技術が横浜とつながりがあることを淺間教授は付け加えました。「横浜国立大学の理工学部では機械工学とロボット工学の教育プログラムがあります。そして神奈川県には日立や東芝などの企業もあり、そのうちの幾つかはこの会議のスポンサーでもあります」

日本の「Wa(わ)」というコンセプトは、自動制御の最新技術と人々の暮らしが調和した社会づくりの一助となる、と話す淺間一教授。

左から、ヨンスーン・エウン教授、ヒュングボ・シム教授、ヒョウ・サン・アン教授

左から、ヨンスーン・エウン教授、ヒュングボ・シム教授、ヒョウ・サン・アン教授

横浜市観光協会がIFAC World Congress 2023に与えた付加価値

国際自動制御連盟世界大会の開催地として横浜が選ばれた理由は、横浜が科学技術の街ということだけでなく、研究者たちに日本へ行きたいと思わせる多くの魅力やサービスがあるからでした。「横浜は国際会議に最適な場所です。素晴らしい景色とおいしい食事があります」と話すのは、光州科学技術院のヒョウ・サン・アン教授です。「個人的な感想ですが、横浜の素晴らしいところは、パシフィコ横浜が近隣のホテルと直結している点です。外の気温が寒くても暑くても、室内で快適に過ごせます」

大邱慶北科学技術院のヨンスーン・エウン教授は「私にとって自動制御のイメージは『マジンガーZ』のような日本のロボットアニメから始まりました」と続けます。偶然にも、現在、横浜では期間限定の「GUNDAM FACTORY(ガンダムファクトリー)」が展開されており、有名な「ガンダム」を見ることができます。それとは対照的に、ソウル大学校のヒュングボ・シム教授は、歴史的な横浜赤レンガ倉庫を存分に楽しんだそうです。横浜市観光協会は会議の参加者のために、市内観光だけでなく、鎌倉や箱根、富士山など近隣都市も含め、観光地の紹介をしました。横浜は交通機関の選択肢が多く、交通網が整った便利なターミナル駅であるため、東京へはもちろん、日本各地へのアクセスも簡単で便利です。

「Girls in Controlワークショップ -女の子のためのプログラミング教室-」

カンザス大学のボゼンナ・パシック=ダンカン教授は、女性と若者をサポートして大きな影響を与えていることを評価され、国際自動制御連盟のDiversity and Inclusion Award(ダイバーシティ&インクルージョン賞)を受賞しました。彼女は、子ども連れの家族が会議に参加しているのがうれしかったそうです。また、自動制御の分野に次世代を呼び込むことが大切だと考えており、特に女性がこの分野に興味を持つことが重要だと言います。自動制御は学際的なものであるため、STEM(科学・技術・工学・数学)分野へのキャリアの入口となりうるからです。パシック=ダンカン教授は次のように話します。「女性を科学分野へ惹きつけることはとても重要です。制御の分野は将来性があり、科学、技術、工学、数学というSTEMの全分野にまたがる魅力的な分野となりうるでしょう」

そのような背景からIFAC World Congress 2023では、主要イベントのひとつとして「Girls in Controlワークショップ -女の子のためのプログラミング教室-」と題したプログラミングのワークショップが開催されました。これは、若い女性に機械工学やコンピューター科学、人工知能研究など、科学の世界に触れてもらう試みで、「このようなアウトリーチ活動はIFACにとってとても重要です」と淺間教授は話します。

横浜市とIFACが共催したプログラミングのワークショップ「Girls in Control」は、横浜市内の中高生を対象に開催され、大学院生がアドバイザー役を務めました。

横浜市とIFACが共催したプログラミングのワークショップ「Girls in Control」は、横浜市内の中高生を対象に開催され、大学院生がアドバイザー役を務めました。

共同出展のブースでは、横浜市観光協会(YCVB)と横浜を拠点とする企業が共同でブースを出展しました。

共同出展のブースでは、横浜市観光協会(YCVB)と横浜を拠点とする企業が共同でブースを出展しました。

魅力がいっぱいの横浜

「横浜はとても魅力的な場所です。美しい風景があり、徒歩でも便利で、羽田空港からのアクセスもよいです。個人的な意見ですが、まさに理想の場所です」とパシック=ダンカン教授は話し、海外からの参加者の多くが彼女の意見に賛同しました。また、エウン教授は次のようにコメントしました。「横浜はビジネス街でもありながら、観光地としての魅力もある街です。国際会議に参加して、美しい場所だと感じました」。さらに、横浜という港町だからこそのユニークな事柄についても多くコメントをしています。「海のロボットを開発している企業が特に興味深かったです。過去10年間でたくさんの会議に参加してきましたが、これだけ多くの海のロボットに関する展示ブースやイベントを見たのは初めてでした。それは、この会議と横浜の意義深い思い出の一つになると思います」

IFAC World Congress 2023:

  • 会議名 第22回 国際自動制御連盟世界大会(IFAC World Congress 2023)
  • 主催者 The International Federation of Automatic Control(IFAC)/国際自動制御連盟
  • 会期 2023年7月9日~14日
  • 開催地 パシフィコ横浜
  • ウェブサイト https://www.ifac2023.org/