アジアにてつながりを強める:第11回 磁気微粒子国際会議(ICFPM 2022)

一柳優子教授 モンセラ・リーヴァス教授

一柳優子教授

ICFPM 2022共同実行委員長

モンセラ・リーヴァス教授

運営委員

2022年10月16日~21日、横浜港が一望できる国際会議場「横浜シンポジア」において、第11回 磁気微粒子国際会議(ICFPM 2022)が開催されました。共同実行委員長を務めた横浜国立大学教授の一柳優子博士が、スペイン・オビエド大学のモンセラ・リーヴァス教授と共に会議の感想を語りました。リーヴァス教授は、2019年にスペインで開催された第10回ICFPMの実行委員を務め、また、今回の会議の運営委員としても尽力しました。

磁気ナノ粒子を活用し、社会問題の解決に挑む

極小のものを扱う技術であるナノテクノロジーは、現代の科学研究において非常に幅広い分野と連携しています。ナノテクノロジーの中でも、便利な特性を多く持つ磁気ナノ微粒子は、量子力学的興味のみならず、生物・医学や物質科学、工学や環境の分野において注目されています。

彼女らによると、磁気ナノ粒子は現代のさまざまな深刻な問題を解決へと導くもので、例えば医療分野においては、ガンの診断や早期発見に活用できるほか、世界中の子どもの死因として大きな割合を占める肺炎のような感染症の予防にも応用できるといいます。磁気テクノロジーは、淡水と海水の両方での毒素の検知や有害物質の識別、また、食品の安全性の向上にも活用できるといいます。

磁気ナノ粒子を活用し、社会問題の解決に挑む
パンデミックの状況下で計画された国際会議

横浜シンポジアからの眺め

パンデミックの状況下で計画された国際会議

一柳教授も組織委員会も、ICFPMを横浜に誘致できたことを光栄に思っています。「わたしたちは、2019年にスペインにて開催された会議で誘致のためのプレゼンテーションをし、本会議をアジアで初めて開催することに成功しました」と一柳教授は話します。

2022年の会議に向けて、数年にわたって計画を進めてきましたが、開催日が近づくにつれて、対面式での会議を開催できるかどうか見えない状況となっていきました。新型コロナ感染症のパンデミックにより、日本が外国からの渡航者に対して入国制限を行ったことで、当初6月に開催を予定していた会議をオンライン開催にするか、あるいは入国制限が解除されることを期待して延期するか、主催者は板挟みの状態だったといいます。

「組織委員会は開催日の延期を決定し、結果的にこのような対面でのすばらしい機会を持つことができました。参加者の皆さまには感謝の気持ちでいっぱいです」と一柳教授は話します。日本の入国制限が直前で解除され、来日した参加者は、皆VISAを取り横浜に集まりました。会議全体では、30ヵ国から150名以上が会議に参加しました。そのうち約20名はリモートでの参加でした。このようなイベントでのリモート参加への対応は、パンデミックの間に学んだことが生かされました。

機会の創出

「こうした不透明な時世に国際会議を計画することは精神的にも大変でしたが、これほど多くの参加者を横浜に迎えることができ、そして日本と海外の研究者たちとの交流を深められたことで、全ての努力が報われたと感じています。磁気ナノ粒子の研究フィールドは主にヨーロッパとアメリカに集まっていますが、今回は多くの日本の研究者がそのコミュニティーに加わることができました」と一柳教授は語っています。アジアと欧米の研究者がこの会議でつながることにより、この研究分野のアジアでの発展が期待できます。日本で会議を開催するということは、アジアの研究者の裾野を広げるだけでなく、これまでの日本からのアプローチとは違う方法で、アジア全体のコミュニティーともつながることができるのです。会議を活性化したいと願う主催者にとって、これは重要なメリットと言えます。

「開催日程が確定していない状況であっても、YCVBは揺るぎなくサポートをしてくださいました。組織委員会は、この会議の実現のために尽力してくださったYCVBに大変感謝しています」と一柳教授は続けます。

機会の創出

オランダ、スペイン、スイスから参加した博士号を持つ学生や、これから取得する学生たち

横浜は理想的な開催地

三溪園のエクスカーション

横浜は理想的な開催地

一柳教授とリーヴァス教授は、横浜は開催都市としてすばらしい選択だったと強く感じているといいます。羽田空港からのアクセスがよいだけでなく、インフラが整っており、会議の参加者に必要な魅力的な環境を備えています。自然豊かな公園も多くあり、富士山を見ることもできます。

「会議場は国際クラスのホテルから徒歩圏内にあり、海や美しい公園も近くにあるという好立地にあります。さらに、横浜ではそれほど混雑を感じることもなく、穏やかな雰囲気を感じられたのもよかったです」と、初来日のリーヴァス教授は話します。

リーヴァス教授にとって特に印象深かったのは、オプショナルツアーで歴史的な三溪園を訪れたことだといいます。「三溪園は穏やかで厳かな雰囲気がありました。久しぶりに腰を下ろして寛ぐことができました。」と微笑みます。
横浜は、豊かな自然や文化的背景をもつだけでなく、大学や企業の研究センターが多く集まる科学とテクノロジーの中心地でもあると一柳教授は指摘します。

次世代を見据えて

この会議を主催することで日本が得られたメリットは、日本の次世代の研究者や科学者と、会議の参加者とをつなげる機会が生まれたことです。たくさんの大学生がこの会議にボランティアメンバーとして参加し、中には自分たちの研究発表をした人もいました。「他の研究者や科学者とネットワークをもつことは、学生にとって非常に重要です。それによってコミュニティーの形成や彼らの知名度を上げることにもつながり、さらに将来学生たちが研究者に支援や協力を求める道が開かれるのです」と、一柳教授は説明します。

一柳教授たちは将来を見据え、『わたしたちの日常生活が科学研究によって、より良くなっていること』を多くの注目が集まる国際会議を通じて、一般の人々に情報発信されることを願っています。情報が広く伝わることにより、科学研究がいかに重要であり、必要不可欠なものであるかということについて、人々の理解が深まると考えているからです。

次世代を見据えて

About ICFPM 2022:

  • 会議名 第11回 磁気微粒子国際会議(ICFPM 2022)
  • 主催者 ICFPM2022組織委員会
  • 会期 2022年10月16日~21日
  • 開催地 横浜シンポジア
  • ウェブサイト https://web.apollon.nta.co.jp/icfpm2022